都会では逆立ちしても聞けない贅沢すぎるセリフとともに届けられたのは、「最後の清流」と呼ばれる高知県・仁淀川の天然鮎。
この最高かつ美しい川の恵みをどう楽しむか。
私たちが今回テーマにしたのは、「The Source Gastronomy(水源のガストロノミー)」という試みでした。
鮎が育った同じ仁淀川の水系を仕込み水とする3つの蔵元(司牡丹、仁淀川、亀泉)から6銘柄を厳選。
料理ごとに「冷酒」「常温」「ぬる燗」と温度帯を変え、さらに「同じ蔵から2つの銘柄」を比べるという、ちょっと贅沢な検証会を開催しました。

仁淀ブルーが育む、高知・仁淀川の天然鮎
日本有数の清流であり、その透明度から「仁淀ブルー」とも称される仁淀川。
高知の豊かな太陽を浴びて川底に育つ良質なコケを食べて育った天然鮎は、ひと際香りが高く、「香魚(こうぎょ)」の名にふさわしいスイカのような爽やかな風味を持っています。
さらに、内臓(ワタ)に独特の品の良い苦味とコクを蓄えるのも、この清らかな水環境があってこそ。

仁淀川の鮎の塩焼き
今回はそんな仁淀川の鮎を余すことなく味わうため、定番の「塩焼き」に加え、内臓を贅沢に使った「うるか」、そして旨味を凝縮させた「甘露煮」の3品を用意し、土佐酒とのマリアージュに挑みました。
検証1:アユの塩焼き × 司牡丹(冷酒対決)
まずは王道。大皿に豪快に並んだ、内臓のほのかな苦味と香ばしさがたまらない塩焼き。
ここには司牡丹の2銘柄をキリッと冷酒で合わせました。
A. 司牡丹 仁淀ブルー(超爽快辛口)
まるで鮎に瑞々しいスダチをキュッと搾ったかのような爽快感。
ほどよい鮎の脂を綺麗に洗い流し、次の一口を誘います。
B. 司牡丹 封印酒(純米吟醸)
鮎の持つ「香魚」としてのフルーティーな香りと、お酒のライチ様の香りが口の中で合わさり、ちょっとをエレガントな感じに。
「鮎美味しい~(#^^#)」
「塩焼きサイコー!!」
あちこちで歓声があがりました!!
検証2:うるか × 仁淀川(常温対決)〜これぞ珍味×日本酒の真骨頂〜
今回の会で、最も多くの参加者が「これはヤバい!」と強烈な印象を残したのが、この「うるか」のステージでした。
テーブルに並んだのは、通常の「鮎うるか」と、贅沢な「鮎卵うるか」。
強烈な塩気と独特のコク、そして野性味のある香り。
これに対し、お酒の個性が最も素直に開く「常温」で仁淀川の2銘柄を合わせてみました。

ウルカ×仁淀川(常温対決)
C. 仁淀川 AC95 純米大吟醸
うるかの強い塩気と苦味を、大吟醸の上品な甘みとまろやかさが優しく包み、モダンで洗練された味わいになります。
D. 仁淀川 純米酒
うるかの個性に負けない米の旨味がしっかり噛み合い、切れ上がりのいい後半のドライさが口の中をすっきりと引き締める、まさにこれが珍味と日本酒の神髄といった王道の組合せです。
「どちらも甲乙つけがたい( ;∀;)」
「うるか初めて食べたけど、しょっぱいけど、苦いけど、旨いね~ あはは!」
これぞ珍味と日本酒という組み合わせは大ウケでした。
検証3:甘露煮 × 亀泉(ぬる燗対決)〜地元のバイアスを覆す新提案〜
甘辛くコクのあるタレでじっくり炊き上げた甘露煮。
ここには亀泉の2銘柄を「ぬる燗」にして合わせました。
実は、これが今回のちょっとしたサプライズに。
というのも、地元・高知では「燗酒=安い酒」という古いイメージが残っており、地元の人ほど「亀泉のようなフルーティーで華やかな酒を燗にする」という発想がなかなかありません。
そんなバイアスをあえて覆す検証です。
E. 亀泉 特別純米酒
温めることで旨味とコクがグッと前面に。
甘露煮のタレの甘み、鮎の脂の旨味と完璧にシンクロし、一体となって溶けていくお手本のような組み合わせ。
F. 亀泉 吟麓(純米吟醸)
ぬる燗にすることで青リンゴ系の爽やかさが甘露煮の重たさを絶妙に切り、後半のビターな苦味が鮎の骨の香ばしさと共鳴します。
「ぬる燗にすると吟麓のもつビターな大人な感じがより分かる」
「甘露煮とぬる燗、悪くないですねぇ~(^^)/」
華やかなイメージの強い亀泉の各銘柄ですが、ぬる燗にすることで新たな一面が見えたようです。
The Source Gastronomy
The Source Gastronomyとは「食材が育った土地の風土や伝統、調理法の原点(火や熱の原始的な扱いなど)に立ち返り、それを芸術や学問の領域まで高めて楽しむ食体験」を指すようです。
近年トレンドとなっている、地域の歴史や文化を丸ごと味わう「ローカル・ガストロノミー」の、さらに一歩先にある「原点回帰」の思想を表す言葉として使われています。
同じ海・山・川の循環のなかから生まれた川の幸と地酒。
このローカルペアリングは、単に「合う・合わない」の評価を超えて、その土地の美しい情景を口の中で完成させる、豊かな食体験としてまさに今、世界から注目され始めています。
今回お世話になったお店
今回お世話になったお店は、私の土佐酒アドバイザー22期同期である西岡芳子さん(よしぴー)が営む「酒場黄金(こがね)」さん。
当日は同じく22期同期の三谷さん(アユの塩焼きをお手伝いいただきました!)や先輩アドバイザーも駆けつけ、高知に約600人いるという土佐酒アドバイザーのプロフェッショナルな面々が集う、熱い夜となりました。
プロたちがワイワイと真剣に意見を交わした結果、好みは見事にバラバラ!
しかし、それこそが同じ水源から生まれた素材と酒が織りなす、ペアリングの奥深さの証明でした。

酒場黄金に集う土佐酒アドバイザー22期生

土佐酒アドバイザーの先輩方
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